ヴァーストゥ(インド風水)3
― 環境とアーユルヴェーダ ―

心地よさをめざす環境デザインの知識
はじめに

私たちは、「環境と人の意識や生理」を切り離して考えがちではありませんか?

しかし、「季節の変わり目は体調を崩しやすい」「雨が降ると気分がふさぐ」などと言われているように、季節や気候・気象といった環境と人の間には古来より深い関係があることがわかります。

日本には四季があり、季節特有の環境が花粉症、熱中症、インフルエンザ等の「季節病」を誘発します。
一方、天気が崩れる時に発症しやすくなる喘息や関節痛等は、「気象病(お天気病)」として、近年認知度が上がっています。

このように、環境と人の意識や生理は、区別して考えられないと言えます。


ヴェーダと環境

純粋な知識 ‘ ヴェーダ ’ の分野に、都市や建物のデザインより環境を整える ‘ ヴァーストゥ ’と、人の意識や生理を整える ‘ アーユルヴェーダ ’ があります。
このヴェーダの知識を基に、環境と人との関わり方を考察すると、健全な環境づくり の重要性に導かれます。


アーユルヴェーダ より

環境と人との関わり方について考えるとき、人の意識や生理から捉えた方が理解しやすいため、先に ‘ アーユルヴェーダ ’ の視点よりご説明します。

‘ アーユルヴェーダ ’ は、意識と生理を扱う「生命の科学」を意味しています。

アーユルヴェーダでは、宇宙の万物は五大元素[ 空 ・ 風 ・ 火 ・ 水 ・ 地 ]から構成され、これらが組み合わさり、ヴァータ(風・動き)・ピッタ(火・変化)・カパ(水・構造)の3パターンの生命エネルギー(ドーシャ)を形成するとされます。そして、それぞれの優劣により人の心と身体の性質が決定されると考えられています。
健全性に必要なのは、このドーシャのバランスで、問題や病気はドーシャのアンバランス(必要以上に、増える・減る)が引き起こすと説かれています。

ドーシャのバランスに影響する要素は多様です。
私たち自身の生まれ持った体質 ― 住環境、季節や気象条件、一日の時間帯、そして年齢を含め、私たち自身の考え方や行動、食べ物等の選択により、ドーシャは常に変化しています。

例えば、季節や気象条件による影響としては、夏の暑さによりピッタが増えて乱れやすくなり、風の吹く時期、特に台風の発生時にはヴァータが増えて乱れやすくなるなどです。

台風と環境と生理の考察

ここで、ヴァーストゥとアーユルヴェーダに関係の深いインド占星術 ‘ ジョーティシュ ’ から、太陽系の一つ である ‘ 土星 ’ と台風の関係性を例に考えていきましょう。

環境とアーユルヴェーダイラスト

台風の発生時には、気候・気象が生体に及ぼす影響の研究より喘息を発症しやすくなり、精神的にも不安定になるという現象が認知されつつあります。
このことを ‘ 土星 ’ の持つ意味から精神的環境において考察すると、興味深いことがわかります。

‘ 土星 ’ は、ドーシャの ‘ ヴァータ ’(風・動き)、五大元素の ‘ ヴァーユ ’(風・空気)に関係し、様々な「動き・運動」の要となる 自然の法則です。


ジョーティシュの解釈による ‘ 土星 ’ の対応表
(一部を抜粋)

星 (サンスクリット語) 土星 (シャニ)
ドーシャ ヴァータ
五大元素 ヴァーユ
(風・空気)
身体の器官 呼吸器系 足に関係

台風時の
喘息 ・ 呼吸器系の乱れ の要因として

台風による環境の
ヴァーユ、風 ・ 空気の乱れ が

台風による身体の
ヴァータ、不安定要素の一つ ・ 動きの乱れ を誘発
||
それらは
広く土星(シャニ)の乱れ であることが

‘ 土星 ’ の対応表より、理解できます。
(対応表の項目を下から上へと見ていくと、関連がわかりやすいでしょう。)


台風時は、風が強く吹くことで 風(ヴァーユ)が増加し、環境に ヴァータ(風・動き) の不安定さをつくります。
台風という大きな環境の乱れが、※小さな環境である人の意識や生理(身体の環境)に影響し、ヴァータ の増加に関係してきます。(喘息持ちの人は、天気予報より早く台風の発生を感じることも...)
結果として、生理の働きが不安定となり、この場合、特に呼吸器系が影響を受け、喘息を発症しやすくなり、精神的にも不安定になるであろうことが、土星の知識より関連付けられます。

※通常は、小さな環境は大きな環境の動きに支配されます。
ヒマラヤハウス® では、大きな環境よりの影響を受けにくくすることを目的とした ヴェーダの技術 = ‘ 空間ヒーリング® ’ の癒しを探究しております。

東洋思想では、風邪と呼ばれるような症状も、ヴァータの乱れによって引き起こされると考えます。
「邪」は、不正・有害となる、という意味があるので、「風邪」は、かぜのじゃ、とも読め、風の質が不正・有害に働く、という意味になります。

このように、ヴェーダの知識を基に探究すると、人の意識や生理は環境と密接に関わっていることが理解できます。
このことから、環境を整えることは、健全性の確立に役立つことが容易に推測されます。

参考までに、アーユルヴェーダは、狭義において病気の予防法と捉えられていますが、広義において 公共性の創造 につながると理解できます。
何故なら、人々の健全性が環境づくりに反映されるからです。
整った意識と生理は、きっと環境に公共性を育む源である創造の力を想起させることでしょう。

※公共性についての記事「公共性と環境づくり-ヒマラヤハウス」を是非ご高覧ください。

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  (参考:土星は行動習慣の変更能力に広く関係します)
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参考資料 ジョーティシュを解釈するときの
星のキーワード表PDF

ヴァーストゥ より

‘ アーユルヴェーダ ’ が「生命の科学」と呼ばれるのに対し、環境を整える ‘ ヴァーストゥ ’ は「環境建築学」と言えます。

‘ ヴァーストゥ ’ は、全ての風水の源であり、一般的には「インド風水」と呼ばれ、人の創り出すデザインにおいて、広く都市の環境そして住環境を自然の法則に調和させて環境に秩序を確立します。

万物にはそれぞれ特性があり、環境・土地や建物にもそれぞれ固有の質があります。
本来、都市や建物のデザインは、それぞれ固有の質を見極め、そして自然の法則と共に在る創作物を完成させることが重要です。

例えば、土星が乱れている土地には、土星を整える(調える)建物 = ヴァーストゥ を建築することにより、調和が創られると考えられます。
また、ヴァータに関連付けられる喘息は、環境全体が調整されることによる、何かしらの変化 ― 幸福感の創造を探究すべきと考えます。

ヒマラヤハウスでは ‘ ヴァーストゥ ’ の確立をめざすものとして、ヤギャ・ホーマを感得できる 空間ヒーリング® CG Art の活用をはじめ、空間ヒーリング® 土地 建物のアドヴァイス & デザイン・コーディネートをご提案しております。

それぞれのアプローチより、洗練された環境 ‘ ヴァーストゥ ’ へのコーディネートをめざします。

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参考資料 アートのご提案 “ Durga® 6 ” PDF
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最後に、私たちの「環境を整える」イメージをお伝えします。
環境は、音(観念)の集合体であり、中には乱れている音も存在すると認識しています。
「整える」=「乱れているであろう音を美しい音に調律すること」こそ、ヴァーストゥの創造につながるコーディネートと理解しています。

「環境とアーユルヴェーダ」について、皆様はどのように感じられたでしょうか?
空間ヒーリング® の環境づくりにご興味がありましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。


こちらの記事もぜひご高覧ください。
‘ 太陽 ’ を軸に、ヴァーストゥ・アーユルヴェーダ・ジョーティシュの繋がり(知識の合一性)を考察しました。
「ヴァーストゥ ~ 神話の時代より 3」
https://note.com/vaastu_2022/n/n1c4dab96a190


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